朝起きた時の首の痛み。ほとんどの場合は、筋肉の炎症による、いわゆる「寝違え」です。しかし、ごく稀に、その痛みの背後に、単なる寝違えでは済まされない、危険な病気が隠れていることがあります。いつもと違う、あるいは特定の症状を伴う場合は、「たかが寝違え」と自己判断で放置せず、速やかに医療機関を受診する必要があります。見逃してはならない、危険なサインをいくつか知っておきましょう。まず、最も注意すべきなのが、「手足のしびれ、麻痺、力が入らない」といった症状を伴う場合です。首の痛みと共に、腕や指先にしびれが広がったり、お箸が持ちにくい、文字が書きにくいといった、細かい作業が困難になったりした場合は、「頸椎椎間板ヘルニア」や「頸椎症性神経根症」の可能性があります。これは、首の骨の間にある椎間板が飛び出して神経を圧迫したり、加齢によって変形した骨が神経を刺激したりする病気です。さらに、両手足がしびれる、歩きにくい、階段の上り下りが怖いといった症状は、脊髄そのものが圧迫されている可能性があり、緊急性の高い状態です。次に、「激しい頭痛、吐き気、嘔吐」を伴う場合も危険です。特に、後頭部を殴られたような、今までに経験したことのない激しい頭痛は、「くも膜下出血」のサインかもしれません。また、発熱を伴う場合は、「髄膜炎」などの感染症も疑われます。これらの病気は、命に関わるため、一刻も早く脳神経外科のある救急病院へ行く必要があります。「ろれつが回らない」「物が二重に見える」といった症状も、脳梗塞などの脳血管障害を強く示唆する危険なサインです。また、痛みが首だけでなく、胸や背中にまで広がる場合、心筋梗塞などの心臓の病気が、首の痛みとして感じられている可能性(放散痛)も考えられます。これらのサインに一つでも当てはまる場合は、もはや「寝違え」の範疇ではありません。様子を見るという選択肢はなく、直ちに専門医の診察を受けることが、あなたの健康と未来を守るために、何よりも重要なのです。