子どもに熱と発疹が出た時、保護者が最も心配するのは、「これは一体、何の病気だろうか」ということでしょう。特に、溶連菌感染症の発疹は、他の様々なウイルス性発疹症と見た目が似ているため、自己判断は禁物です。しかし、それぞれの病気の特徴を知っておくことで、過度な不安を和らげ、医師に症状を伝える際の助けとなります。まず、「溶連菌感染症」の発疹は、「猩紅熱様発疹」と呼ばれ、全身の皮膚が日焼けのように赤くなり、その上に細かい砂状の赤い発疹が密集するのが特徴です。触るとザラザラとした感触があります。発疹は首や胸から始まり、全身に広がりますが、口の周りだけが白く抜ける「口囲蒼白(こういそうはく)」や、舌がイチゴのようにブツブツになる「イチゴ舌」といった、特徴的な所見を伴うことが多いです。そして、必ずと言っていいほど、強い喉の痛みや発熱があります。次に、よく似ているのが「麻疹(はしか)」です。麻疹の発疹も赤いですが、溶連菌よりは一つ一つの発疹が大きく、次第にそれらが融合して、まだらな地図状になるのが特徴です。また、発疹が出る前に、高熱と共に、咳、鼻水、目の充血といった、風邪のような「カタル症状」が強く現れます。口の中に、コプリック斑という白い粘膜疹が見られるのも、診断の重要な手がかりとなります。感染力が非常に強く、重症化しやすいため、最も警戒すべき病気の一つです。一方、「風疹(三日ばしか)」の発疹は、麻疹よりも淡いピンク色で、一つ一つの発疹が小さく、融合することはあまりありません。発熱は軽度なことが多く、発熱と同時に発疹が出現します。耳の後ろや首のリンパ節が腫れるのが特徴的です。そして、「突発性発疹」は、乳児期に多く見られます。この病気の最大の特徴は、3~4日間続いた高熱が「下がった後」に、発疹が現れることです。発疹は痒みを伴わず、数日で跡形もなく消えていきます。これらの違いをまとめると、「発疹の出るタイミング(熱と同時か、後か)」「発疹の性状(細かいか、大きいか、融合するか)」「随伴症状(喉の痛み、咳、鼻水、リンパ節の腫れなど)」が、鑑別の重要なポイントとなります。しかし、これらはあくまで典型例です。最終的な診断は、必ず医師の診察と、必要に応じた検査によって下されるべきものです。
溶連菌の発疹と他の病気の発疹との見分け方