痛くてつらい口内炎。一刻も早く治したいけれど、妊娠中は、お腹の赤ちゃんへの影響を考えると、市販薬を使うことに強い抵抗を感じる方がほとんどでしょう。「この薬は、妊婦が使っても本当に安全なのだろうか」。その不安は、当然のものです。結論から言えば、妊娠中に使用できる口内炎の市販薬は「存在します」が、その選択と使用には、細心の注意が必要です。市販の口内炎治療薬には、大きく分けて「貼り薬(パッチ)」「塗り薬(軟膏)」「スプレー薬」の三つのタイプがあります。まず、「貼り薬(パッチタイプ)」は、患部に直接フィルムを貼り付けて、物理的に刺激から保護するものです。薬の成分が、体内に吸収される量が非常に少ないため、妊娠中でも比較的安全に使用できるとされています。痛みを直接カバーしてくれるので、食事の際のつらさを和らげる効果も期待できます。次に、「塗り薬(軟膏タイプ)」です。これには、炎症を抑える「ステロイド成分」が含まれているものと、含まれていないものがあります。妊娠中のステロイドの使用については、様々な意見がありますが、口内炎の軟膏のように、局所的に短期間使用する程度であれば、胎児への影響は極めて低いと考えられています。しかし、自己判断での長期連用は避けるべきです。非ステロイド性の、殺菌成分や粘膜修復成分が主体の軟膏であれば、より安心して使用できるでしょう。そして、「スプレー薬」も、患部に直接噴霧するため、全身への影響は少ないと考えられます。ただし、殺菌成分である「ポビドンヨード(イソジンなど)」が含まれているスプレーは、妊娠中の使用には注意が必要です。ヨウ素を過剰に摂取すると、胎児の甲状腺機能に影響を与える可能性があるため、長期・頻回の使用は避けるべきとされています。このように、使用できる薬はありますが、最も重要なのは、「購入前に、必ず薬剤師または登録販売者に相談する」ことです。ドラッグストアの専門家に、「現在妊娠何週目であるか」を伝え、どの製品が安全に使用できるか、アドバイスを仰いでください。そして、数日間使用しても症状が改善しない、あるいは悪化するようであれば、自己判断を続けずに、必ず産婦人科の主治医や、歯科、耳鼻咽喉科といった専門医に相談することが、母子ともに安全な、最善の道なのです。