朝、目を覚ました瞬間に首に走る激痛。首が回らず、特定の方向に動かそうとすると、まるで電気が走るかのような痛みに襲われる。多くの人が経験する「寝違え」ですが、その痛みがひどい時、一体何科を受診すれば良いのか迷ってしまうことは少なくありません。結論から言えば、このような寝違えのような痛みの際に、まず最初に訪れるべきなのは「整形外科」です。整形外科は、骨、関節、筋肉、靭帯、そして神経といった、体を動かすための器官、いわゆる運動器の病気や怪我を専門とする診療科です。寝違えの主な原因は、睡眠中の不自然な姿勢によって、首周りの筋肉が炎症を起こしたり、靭帯が軽い捻挫のような状態になったりすることです。これはまさに、整形外科が扱うべき運動器のトラブルなのです。整形外科では、問診で痛みの状況を詳しく聞き、首の動かせる範囲や痛みの場所を特定する触診を行います。そして、レントゲン検査で、骨の変形や骨折、あるいは頸椎のずれといった、重大な問題が隠れていないかを確認します。その上で、消炎鎮痛薬や湿布、筋弛緩薬などを処方し、痛みを和らげる治療を行います。痛みが非常に強い場合には、頸椎カラーで首を固定することもあります。一方で、手のしびれや麻痺、激しい頭痛やめまいといった、明らかに神経系の異常を伴う場合は、「脳神経外科」や「神経内科」の受診も視野に入れる必要があります。ただの寝違えではなく、頸椎椎間板ヘルニアや、稀ですが脳の病気が隠れている可能性も考えられるからです。しかし、まずは運動器全般の専門家である整形外科を受診し、そこで専門的な鑑別が必要と判断されれば、適切な科へ紹介してもらう、という流れが最もスムーズで確実な選択と言えるでしょう。