ほとんどの擦り傷は、家庭での適切な手当てで治癒に向かいますが、中には、専門的な医療処置が必要な、危険なケースも存在します。自己判断で様子を見ているうちに、感染症が悪化したり、醜い傷跡が残ってしまったりする事態を避けるために、「病院へ行くべき擦り傷」のサインを知っておくことが非常に重要です。まず、第一に確認すべきは「傷の深さと範囲」です。皮膚の表面(表皮)が削れた程度の浅い擦り傷であれば、自宅でのケアも可能ですが、その下の真皮や、さらに深い皮下組織まで達しているような深い傷は、病院での治療が必要です。また、手のひらよりも大きい広範囲の擦り傷も、感染のリスクが高まるため、受診を検討すべきです。次に、「傷の汚れ具合」も重要な判断基準です。転倒した場所が、砂利道や土の上、あるいはアスファルトの上であった場合、傷口に砂や土、アスファルトの黒い粒子などが深く入り込んでいる可能性があります。これらを家庭での洗浄だけで完全に取り除くのは困難です。これらの異物が皮膚の中に残ってしまうと、将来的に消えないシミ(外傷性刺青)になってしまうため、形成外科などで、専門的な洗浄(ブラッシング)や処置を受ける必要があります。また、「動物に噛まれたり、引っかかれたりしてできた傷」や、「錆びた金属でできた傷」も、注意が必要です。これらの傷は、様々な細菌に感染しているリスクが高く、特に、破傷風菌に感染する危険性があります。破傷風は、命に関わることもある重篤な感染症です。過去の予防接種歴を確認し、必要であれば、病院で破傷風トキソイドの追加接種を受ける必要があります。そして、最も分かりやすい危険なサインが、「感染の兆候」です。怪我をしてから数日後、傷の周りが赤く、熱を持ってパンパンに腫れてきた、ズキズキとした痛みが強くなってきた、黄色や緑色の膿が出てきた、といった症状は、細菌感染が起きている証拠です。この状態を放置すると、感染が全身に広がる「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」などに進行する可能性もあります。これらのサインに一つでも当てはまる場合は、迷わず皮膚科や形成外科、外科などを受診してください。
こんな擦り傷は病院へ行くべき危険なサイン