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バセドウ病の診断と専門医選びの指針
バセドウ病の疑いがあるとき、多くの人が最初に悩むのが「何科を受診すれば良いのか」という点ではないでしょうか。甲状腺の病気は、聞き慣れない方にとってはどの専門医にかかるべきか分かりにくいものです。結論から言えば、バセドウ病の診断と治療は「内分泌内科」が専門となります。しかし、最初から内分泌内科を受診することは、必ずしも一般的ではないかもしれません。初期症状として動悸、手の震え、倦怠感などが現れると、循環器内科や一般内科を受診するケースも少なくありません。実際に私も、初期の段階では漠然とした体調不良に悩まされ、いくつかの医療機関を巡った経験があります。その中で、医師が「もしかしたら甲状腺に問題があるかもしれませんね」と示唆してくれたことで、ようやく専門医への道が開けたのです。このように、最初は他の症状からアプローチし、医師の判断によって専門科へ紹介されるという流れも珍しくありません。内分泌内科は、ホルモンのバランスを専門とする科であり、甲状腺ホルモンの過剰分泌が原因であるバセドウ病の診断には不可欠です。採血による甲状腺ホルモン値の測定や自己抗体の有無の確認、超音波検査による甲状腺の大きさや状態の把握など、専門的な検査を通じて確定診断が行われます。これらの検査は、一般内科では対応しきれない場合が多いため、症状が改善しない場合は専門医への紹介を積極的に求めることが大切です。また、バセドウ病は眼球突出などの眼症状を伴うこともあり、その場合は眼科との連携も重要になります。内分泌内科の医師が、必要に応じて他の専門医との連携を促してくれるはずです。患者としては、自分の症状を正確に伝え、医師とのコミュニケーションを密にすることで、適切な診断と治療への近道となるでしょう。インターネットでの情報収集も大切ですが、最終的には専門医の意見を尊重し、安心して治療に臨むことが最も重要です。
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溶連菌の回復期に皮がむけるのはなぜか
溶連菌感染症の急性期の症状、つまり高熱や喉の痛み、そしてかゆみを伴う赤い発疹がようやく治まり、ホッとしたのも束の間。発症から1~2週間ほど経った頃に、子どもの手や足の指先から、皮膚が日焼けの後のように、薄くポロポロとむけ始めることがあります。これを見た保護者は、「また別の皮膚の病気?」「薬の副作用?」と、新たな心配をしてしまうかもしれませんが、これは「落屑(らくせつ)」と呼ばれる、溶連菌感染症の回復期にみられる、非常に特徴的な症状の一つです。この現象は、病気がきちんと治癒に向かっている証拠であり、決して心配なものではありません。では、なぜこのような皮むけが起こるのでしょうか。その原因は、発疹を引き起こしたのと同じ、溶連菌が産生する「発疹毒(外毒素)」にあります。この毒素は、皮膚の表面にある角質層の細胞間の結合にダメージを与えます。急性期には、このダメージが炎症や発疹として現れますが、回復期に入り、炎症が治まってくると、ダメージを受けた古い角質層が、新しく再生された下の皮膚から剥がれ落ちてくるのです。これが、落屑の正体です。つまり、皮膚のターンオーバー(新陳代謝)の一環であり、いわば「皮膚の脱皮」のようなものと考えることができます。落屑は、特に発疹が強かった部分や、皮膚が厚い手足の指先、手のひら、足の裏などによく見られます。時には、手袋や靴下を脱ぐように、広範囲の皮がベロンとむけることもあり、その見た目に驚かされるかもしれません。しかし、この皮むけ自体には、かゆみや痛みを伴うことは、ほとんどありません。子ども自身も、特に気にしていない場合が多いでしょう。この時期のケアとして大切なのは、無理に皮を剥がそうとしないことです。自然に剥がれ落ちるのを待ちましょう。無理に剥がすと、まだ未熟な下の皮膚を傷つけてしまう可能性があります。また、皮がむけた後の新しい皮膚は、乾燥しやすくデリケートなため、保湿剤をこまめに塗って、優しく保護してあげることが大切です。この特徴的な落屑の存在は、数週間前にかかった発熱や発疹が、溶連菌感染症によるものであったことを、後から証明してくれる、診断の助けになることさえあるのです。
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ただの寝違えと放置した私の大失敗
いつものことだと、高を括っていました。朝、起きた時の首の痛み。ああ、また変な格好で寝てしまったんだな、と。普段なら、二、三日もすれば自然と治るので、今回も特に気にせず、痛みを我慢しながら仕事へ向かいました。しかし、今回は様子が違いました。時間が経っても痛みは一向に引かず、むしろ、じわじわと痛みの範囲が広がっていくような感覚があったのです。同僚に「首、痛そうだね。マッサージしてあげようか?」と言われ、つい甘えて肩や首を揉んでもらいました。その瞬間は気持ちが良いような気がしましたが、後になって思えば、それが最悪の選択でした。翌日、痛みはさらに激しくなり、首だけでなく、右の肩から腕にかけて、重くだるいしびれまで現れ始めたのです。さすがにこれはおかしいと感じ、私はようやく整形外科のクリニックへ向かいました。医師にこれまでの経緯を話すと、すぐにレントゲンを撮ることになりました。そして診察室で告げられたのは、「典型的な寝違えの悪化パターンですね。炎症を起こしている時に、マッサージで刺激を与えたのが一番いけなかった」という厳しい言葉でした。診断は、重度の頸部筋膜炎。そして、腕のしびれは、炎症によって腫れた筋肉が神経を圧迫しているためだろうとのこと。もう少し放置していたら、頸椎椎間K板ヘルニアに移行していた可能性もあったと聞き、私は自分の安易な自己判断を心から後悔しました。その日から、処方された消炎鎮痛薬と湿布、そして首を固定する頸椎カラーが、私の相棒となりました。痛みが引くまで一週間以上かかり、腕のしびれが完全になくなるまでには、さらに時間が必要でした。たかが寝違え、されど寝違え。あの経験以来、私は首に少しでも違和感を覚えたら、決して無理をせず、まずは安静にすることを心に誓いました。
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下痢や嘔吐を伴う腹痛、感染性胃腸炎の対処
突然の腹痛と共に、激しい下痢や嘔吐に襲われる。冬場を中心に流行するノロウイルスやロタウイルス、あるいは夏場に多い細菌性の食中毒など、「感染性胃腸炎」は、多くの人が経験する、非常につらい病気です。この病気にかかった時、最も重要なのは、適切な対症療法を行い、脱水症状を防ぐことです。感染性胃腸炎の症状は、原因となるウイルスや細菌が、胃腸の粘膜に感染し、炎症を起こすことで生じます。下痢や嘔吐は、体内に侵入した病原体を、外に排出しようとする、体の正常な防御反応です。そのため、市販の下痢止めを自己判断で服用するのは、原則として避けるべきです。病原体の排出を妨げ、かえって回復を遅らせてしまう可能性があるからです。この時期に、何よりも優先すべきなのが「水分補給」です。下痢や嘔吐によって、体は大量の水分と、ナトリウムやカリウムといった電解質(ミネラル)を失います。これを補給しないと、脱水症状に陥り、重症化すると意識障害などを引き起こす危険性もあります。水分補給には、水やお茶だけでは不十分です。失われた電解質を効率よく補給できる、「経口補水液」が最も適しています。薬局などで市販されており、これを少量ずつ、こまめに摂取することが重要です。一度にたくさん飲むと、嘔吐を誘発してしまうことがあるため、スプーン一杯や、ペットボトルのキャップ一杯を、5分おきに飲む、といったペースで、根気よく続けましょう。食事については、無理に食べる必要はありません。症状が強い間は、食事を休み、胃腸を休ませることに専念します。食欲が少し出てきたら、おかゆや、よく煮込んだうどん、すりおろしたりんご、豆腐など、消化が良く、胃腸に負担をかけないものから、少しずつ再開していきます。乳製品や、脂肪分の多いもの、食物繊維の多いものは、症状が落ち着くまで避けましょう。ほとんどのウイルス性胃腸炎は、数日で自然に回復しますが、嘔吐が激しくて全く水分が摂れない場合、高熱が続く場合、血便が出る場合、そして、ぐったりして意識がはっきりしない場合は、点滴による水分補給などが必要となるため、速やかに医療機関を受診してください。
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ストレスと腹痛の切っても切れない関係
重要な会議の前や、試験の前に、決まってお腹がキリキリと痛くなったり、下痢に襲われたりする。特に検査をしても、胃や腸に異常は見つからない。このような経験を持つ人は、決して少なくないでしょう。これは、「過敏性腸症候群(IBS)」の典型的な症状であり、ストレスと腹痛の間に、いかに深く、そして密接な関係があるかを示しています。私たちの脳と腸は、「脳腸相関」という言葉で表されるように、自律神経やホルモンなどを介して、常にお互いに情報をやり取りし、影響を与え合っています。脳が、プレッシャーや不安といった「ストレス」を感じると、その信号は自律神経を介して、瞬時に腸に伝わります。自律神経のうち、ストレス下で優位になる「交感神経」が活発になると、腸の動き(蠕動運動)が異常に激しくなったり、逆に動きが鈍くなったりします。また、腸の知覚が過敏になり、通常では感じないような、わずかな刺激(腸内のガスの動きなど)に対しても、強い痛みとして感じてしまうようになります。これが、ストレスによって腹痛や、下痢、便秘が引き起こされるメカニズムです。過敏性腸症候群は、大きく分けて、下痢を繰り返す「下痢型」、便秘に悩まされる「便秘型」、そして下痢と便秘を交互に繰り返す「混合型」があります。特に、通勤電車の中や、会議中など、すぐにトイレに行けない状況で症状が悪化しやすく、「またお腹が痛くなったらどうしよう」という予期不安が、さらなるストレスとなって、症状を悪化させるという、悪循環に陥りがちです。このつらい症状と付き合っていくためには、まず、消化器内科などを受診し、炎症性腸疾患やがんといった、他の病気が隠れていないことを確認してもらうことが大前提です。その上で、過敏性腸症候群と診断されたら、生活習慣の改善が治療の基本となります。規則正しい食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけ、自律神経のバランスを整えることが重要です。食事では、暴飲暴食や、脂肪分の多い食事、香辛料、アルコール、カフェインといった、腸を刺激するものを避けるのが良いでしょう。そして、何よりも、自分なりのストレス解消法を見つけ、心と体の緊張を解きほぐす時間を持つことが大切です。ストレスをゼロにすることはできませんが、その受け止め方や、付き合い方を変えることで、お腹の症状は、きっと改善していくはずです。
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痛みが和らいだ後の正しいストレッチ
寝違えの激しい痛みのピークが過ぎ、少しずつ首を動かせるようになってきた回復期。この段階で、硬くなった筋肉をほぐし、血行を促進するための、適切なストレッチを取り入れることは、スムーズな回復と再発予防に非常に効果的です。しかし、タイミングや方法を間違えると、かえって症状をぶり返してしまう危険性もあります。焦らず、正しく、そして優しく行うことが重要です。ストレッチを開始する目安は、発症から48時間以上が経過し、ズキズキとした鋭い痛みが治まり、安静にしていても痛みを感じなくなった頃です。まだ少しでも強い痛みが残っている急性期に、無理に伸ばすのは絶対にやめましょう。ストレッチを行う上での大原則は、「ゆっくりと、痛気持ちいい範囲で、呼吸を止めずに行う」ことです。反動をつけたり、痛みを我慢して無理に伸ばしたりするのは、筋肉を再び傷つける原因となります。まず、椅子に座り、背筋を真っ直ぐに伸ばします。ゆっくりと息を吐きながら、首を真横に倒し、首の側面が心地よく伸びるのを感じながら15秒ほどキープします。左右交互に行いましょう。次に、同じようにゆっくりと息を吐きながら、首を前に倒し、首の後ろ側の筋肉を伸ばします。この時、背中が丸まらないように注意します。これも15秒キープです。首を後ろに反らす動きは、神経を圧迫する可能性もあるため、慎重に行うか、痛みが強い場合は避けましょう。さらに、肩のストレッチも有効です。両肩を、耳に近づけるように、ぐーっとすくめ、数秒後にストンと力を抜きます。これを数回繰り返すことで、首から肩にかけての僧帽筋の緊張がほぐれます。また、両手を後ろで組み、肩甲骨を寄せるように胸を張るストレッチも、猫背の改善と首周りの血行促進に繋がります。これらのストレッチは、お風呂上がりの体が温まっている時に行うと、より効果的です。寝違え後のストレッチは、治療ではなく、あくまでリハビリテーションの一環です。自分の体の声に耳を傾け、「伸ばす」というよりは「緩める」という意識で、焦らず丁寧に行うことが、しなやかで痛みのない首を取り戻すための鍵となります。
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鼠径ヘルニア、いわゆる脱腸は何科へ
お腹の痛みやしびれを引き起こす椎間板ヘルニアとは異なり、「鼠径ヘルニア」は、全く別の病気であり、受診すべき診療科も異なります。鼠径ヘルニアとは、本来お腹の中にあるはずの腸などの内臓が、足の付け根、いわゆる鼠径部(そけいぶ)の筋膜の弱い部分から、皮膚の下にぽっこりと飛び出してしまう状態を指します。一般的には「脱腸」という名前で広く知られています。この鼠径ヘルニアの症状に気づいた場合、訪れるべき診療科は「外科」または「消化器外科」です。鼠径ヘルニアは、薬で治すことはできず、根本的な治療法は「手術」しかありません。そして、この手術を専門的に行っているのが、外科医なのです。初期症状は、立った時や、お腹に力を入れた時に、足の付け根が柔らかく膨らむ程度で、痛みはほとんどありません。この膨らみは、横になったり、手で押したりすると、元に戻ることが多いです。しかし、この状態を放置していると、徐々に膨らみが大きくなり、違和感や引きつるような痛みを感じるようになります。そして、鼠径ヘルニアで最も恐ろしいのが、「嵌頓(かんとん)」という状態です。これは、飛び出した腸が、筋膜の穴に締め付けられて、お腹の中に戻らなくなってしまう状態を指します。嵌頓を起こすと、その部分が硬く腫れ上がり、激しい痛みを伴います。さらに、腸への血流が途絶えてしまうと、腸が壊死を起こし、腹膜炎を併発して、命に関わる危険性もあります。嵌頓が疑われる場合は、一刻も早く救急病院を受診し、緊急手術を受ける必要があります。鼠径ヘルニアは、子どもから大人まで、幅広い年齢層で発症しますが、特に、腹壁の筋力が弱くなる中高年の男性に多く見られます。また、重いものを持つ仕事や、便秘で強くいきむ習慣、激しい咳なども、腹圧を高め、発症の引き金となります。足の付け根に、ぽっこりとした膨らみを見つけたら、それは脱腸のサインかもしれません。「恥ずかしいから」と放置せず、できるだけ早く外科や消化器外科を受診し、専門医の診断を仰ぐことが、安全で確実な治療への第一歩です。
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溶連菌の発疹はいつまでかゆいのか
溶連菌感染症のつらい症状の一つである、発疹とかゆみ。看病する保護者にとって、「このかゆみは、一体いつまで続くのだろう」という疑問は、非常に切実なものです。見通しが立つことで、心の負担は大きく軽減されます。溶連菌の発疹とかゆみの期間は、治療の開始タイミングと、その後の経過によって変わってきますが、一般的な目安を知っておきましょう。まず、発疹は、通常、発熱や喉の痛みが始まってから1日から2日後に出現します。首や胸から始まり、その後、24時間以内には全身に広がっていきます。そして、この発疹が出現すると同時に、あるいは少し遅れて、かゆみの症状も現れ始めます。かゆみのピークは、発疹が最も広がり、赤みが強くなる、発症から3日から5日目頃に訪れることが多いようです。この時期は、子どもが最もかゆみを訴え、夜も眠れなくなるなど、親子にとって一番の頑張りどころとなります。では、このかゆみはいつまで続くのでしょうか。溶連菌感染症の治療の基本は、抗生物質の内服です。抗生物質を服用し始めると、体内の溶連菌は速やかに減少し、それに伴って、菌が産生する発疹毒の量も減っていきます。そのため、通常は、抗生物質を飲み始めてから24時間から48時間経つと、熱や喉の痛みといった全身症状と共に、発疹の赤みやかゆみも、徐々に和らいでいきます。つまり、かゆみが顕著に続くのは、治療開始後の数日間、長くても1週間程度と考えてよいでしょう。その後、発疹は、出現した時とは逆に、徐々に色が薄くなり、消えていきます。そして、発疹が治まった後、回復期(発症から1~2週間後)になると、今度は手足の指先などの皮膚が、日焼けの後のように、薄くポロポロとむけてくることがあります。これを「落屑(らくせつ)」と呼びますが、これは治癒の過程で起こる自然な現象であり、かゆみや痛みを伴うことはほとんどありません。もし、抗生物質を飲んでいるにもかかわらず、かゆみが一向に治まらない、あるいは悪化するような場合は、薬のアレルギー(薬疹)の可能性も考えられるため、自己判断せず、処方した医師に相談することが重要です。
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腹痛で訪れるべき診療科とその選び方
いざ、腹痛で病院へ行こうと決心した時、次に多くの人が直面するのが、「一体、何科を受診すれば良いのか」という問題です。腹痛の原因は非常に多岐にわたるため、最初に適切な診療科を選ぶことが、スムーズな診断と治療への近道となります。まず、腹痛の診療において、中心的な役割を担うのが「消化器内科」です。消化器内科は、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸といった消化管と、肝臓、胆嚢、膵臓といった消化器系の臓器全般の病気を専門とします。胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎、感染性胃腸炎、虫垂炎、大腸憩室炎、胆石症、膵炎など、腹痛を引き起こす多くの病気が、この診療科の対象となります。腹痛の原因がはっきりしない場合や、食後の痛み、下痢や便秘を伴う場合は、まず消化器内科を受診するのが最も一般的で確実な選択と言えるでしょう。次に、一般的な内科、つまり「総合内科」や、普段から通院している「かかりつけ医」も、最初の相談窓口として非常に重要です。特に、腹痛以外の症状(発熱、咳など)もある場合や、高血圧、糖尿病などの持病がある場合は、体全体を総合的に診てくれる内科医が適しています。そこで専門的な検査が必要と判断されれば、適切な専門科へ紹介してもらうことができます。また、女性の場合、下腹部の痛みが「婦人科系」の病気に起因することも少なくありません。月経周期と関連した痛み(月経痛、排卵痛)や、不正性器出血を伴う場合は、「婦人科」を受診する必要があります。子宮内膜症や卵巣嚢腫、あるいは異所性妊娠(子宮外妊娠)といった、緊急性の高い病気の可能性も考えられます。さらに、排尿時の痛みや頻尿、血尿などを伴う腹痛の場合は、膀胱炎や尿路結石といった「泌尿器科」の病気が疑われます。このように、腹痛の原因は様々です。どの科に行けば良いか迷った時は、腹痛以外の「随伴症状」に注目することが、正しい選択への大きなヒントとなります。消化器症状が主なら消化器内科、女性特有の症状なら婦人科、排尿の異常なら泌尿器科。この基本を覚えておきましょう。
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ヘルニアの症状が出たら何科へ行くべきか
腰や首に激しい痛みが走り、手足にしびれが広がる。このような症状が現れた時、「ヘルニアかもしれない」と不安になる方は多いでしょう。そして、その次に多くの人が直面するのが、「この症状は、一体何科で診てもらえば良いのか」という問題です。ヘルニアという言葉は広く知られていますが、その原因と症状によって、訪れるべき診療科は異なります。まず、最も一般的に「ヘルニア」として認識されている「椎間板ヘルニア」の場合、最初に受診を検討すべき診療科は「整形外科」です。整形外科は、骨、関節、筋肉、そして神経といった、運動器全般の病気を専門とします。椎間板ヘルニアは、背骨の骨と骨の間にあるクッション(椎間板)が飛び出し、神経を圧迫することで痛みやしびれを引き起こす病気であり、まさに整形外科の専門領域です。整形外科では、レントゲンやMRIといった画像検査でヘルニアの状態を正確に診断し、薬物療法、リハビリ、ブロック注射、そして手術まで、一貫した治療を提供してくれます。次に、しびれや麻痺といった神経症状が非常に強い場合や、診断が複雑なケースでは、「脳神経外科」も重要な選択肢となります。脳神経外科は、脳と脊髄、そして末梢神経といった、中枢神経から末梢神経までを外科的に治療する専門家です。特に、手術を視野に入れるような重症の椎間板ヘルニアや、脊髄そのものに原因がある病気(脊髄腫瘍など)との鑑別において、その専門性を発揮します。また、足の付け根(鼠径部)がぽっこりと膨らむ「鼠径ヘルニア」、いわゆる脱腸の場合は、専門科が全く異なります。これは、消化器や内臓を扱う「消化器外科」や「外科」が担当となります。このように、「ヘルニア」という言葉だけで診療科を決めることはできません。痛む場所が首や腰で、手足のしびれを伴うのであれば、まずは運動器の専門家である整形外科へ。これが、正しい診断と治療への最も確実な第一歩と言えるでしょう。