お腹の痛み、つまり腹痛は、誰もが一度は経験する、非常にありふれた症状です。食べ過ぎや冷えによる一時的な痛みから、生命に関わる重篤な病気のサインまで、その原因は多岐にわたります。そのため、「この腹痛は、家で様子を見ていて良いものか、それとも病院へ行くべきか」という判断に迷う場面は少なくありません。自己判断で様子を見ているうちに、手遅れになってしまう事態は避けたいものです。ここでは、病院を受診すべきかどうかの判断基準となる、いくつかの重要なポイントをご紹介します。まず、痛みの「強さ」と「持続時間」に注目しましょう。「今までに経験したことのないような激しい痛み」「冷や汗が出るほどの痛み」「体を動かすことも、歩くことも困難な痛み」がある場合は、迷わず救急外来を受診するか、救急車を呼ぶべきです。また、最初は我慢できる程度の痛みでも、時間が経つにつれて、どんどん痛みが強くなっていく場合も、危険なサインです。痛みが数時間以上、あるいは断続的に一日以上続いている場合も、単なる一過性の痛みとは考えにくいため、医療機関を受診しましょう。次に、「腹痛以外の症状」の有無を確認します。「38度以上の高熱」「吐血(血を吐く)や下血(お尻から血が出る、あるいは黒い便が出る)」「繰り返す嘔吐で、水分も摂れない」「意識が朦朧としている」といった症状を伴う場合は、緊急性が高いと考えられます。これらは、消化管の出血や穿孔(穴が開くこと)、重症の感染症などを示唆している可能性があります。また、痛む「場所」もヒントになります。例えば、みぞおちから始まって、次第に右下腹部に痛みが移動する場合は、虫垂炎(盲腸)の典型的な症状です。背中にも痛みが広がる場合は、膵炎や尿路結石の可能性も考えられます。これらの危険なサインに一つでも当てはまる場合は、躊躇せずに医療機関を受診してください。一方で、痛みが比較的軽く、他に心配な症状がなく、食事も摂れているような場合は、一晩様子を見るという選択も可能です。しかし、少しでも不安を感じたり、症状が改善しなかったりするようであれば、翌日には必ず、かかりつけ医や消化器内科を受診することが賢明です。