腰や首に激しい痛みが走り、手足にしびれが広がる。このような症状が現れた時、「ヘルニアかもしれない」と不安になる方は多いでしょう。そして、その次に多くの人が直面するのが、「この症状は、一体何科で診てもらえば良いのか」という問題です。ヘルニアという言葉は広く知られていますが、その原因と症状によって、訪れるべき診療科は異なります。まず、最も一般的に「ヘルニア」として認識されている「椎間板ヘルニア」の場合、最初に受診を検討すべき診療科は「整形外科」です。整形外科は、骨、関節、筋肉、そして神経といった、運動器全般の病気を専門とします。椎間板ヘルニアは、背骨の骨と骨の間にあるクッション(椎間板)が飛び出し、神経を圧迫することで痛みやしびれを引き起こす病気であり、まさに整形外科の専門領域です。整形外科では、レントゲンやMRIといった画像検査でヘルニアの状態を正確に診断し、薬物療法、リハビリ、ブロック注射、そして手術まで、一貫した治療を提供してくれます。次に、しびれや麻痺といった神経症状が非常に強い場合や、診断が複雑なケースでは、「脳神経外科」も重要な選択肢となります。脳神経外科は、脳と脊髄、そして末梢神経といった、中枢神経から末梢神経までを外科的に治療する専門家です。特に、手術を視野に入れるような重症の椎間板ヘルニアや、脊髄そのものに原因がある病気(脊髄腫瘍など)との鑑別において、その専門性を発揮します。また、足の付け根(鼠径部)がぽっこりと膨らむ「鼠径ヘルニア」、いわゆる脱腸の場合は、専門科が全く異なります。これは、消化器や内臓を扱う「消化器外科」や「外科」が担当となります。このように、「ヘルニア」という言葉だけで診療科を決めることはできません。痛む場所が首や腰で、手足のしびれを伴うのであれば、まずは運動器の専門家である整形外科へ。これが、正しい診断と治療への最も確実な第一歩と言えるでしょう。