寝違えの激しい痛みのピークが過ぎ、少しずつ首を動かせるようになってきた回復期。この段階で、硬くなった筋肉をほぐし、血行を促進するための、適切なストレッチを取り入れることは、スムーズな回復と再発予防に非常に効果的です。しかし、タイミングや方法を間違えると、かえって症状をぶり返してしまう危険性もあります。焦らず、正しく、そして優しく行うことが重要です。ストレッチを開始する目安は、発症から48時間以上が経過し、ズキズキとした鋭い痛みが治まり、安静にしていても痛みを感じなくなった頃です。まだ少しでも強い痛みが残っている急性期に、無理に伸ばすのは絶対にやめましょう。ストレッチを行う上での大原則は、「ゆっくりと、痛気持ちいい範囲で、呼吸を止めずに行う」ことです。反動をつけたり、痛みを我慢して無理に伸ばしたりするのは、筋肉を再び傷つける原因となります。まず、椅子に座り、背筋を真っ直ぐに伸ばします。ゆっくりと息を吐きながら、首を真横に倒し、首の側面が心地よく伸びるのを感じながら15秒ほどキープします。左右交互に行いましょう。次に、同じようにゆっくりと息を吐きながら、首を前に倒し、首の後ろ側の筋肉を伸ばします。この時、背中が丸まらないように注意します。これも15秒キープです。首を後ろに反らす動きは、神経を圧迫する可能性もあるため、慎重に行うか、痛みが強い場合は避けましょう。さらに、肩のストレッチも有効です。両肩を、耳に近づけるように、ぐーっとすくめ、数秒後にストンと力を抜きます。これを数回繰り返すことで、首から肩にかけての僧帽筋の緊張がほぐれます。また、両手を後ろで組み、肩甲骨を寄せるように胸を張るストレッチも、猫背の改善と首周りの血行促進に繋がります。これらのストレッチは、お風呂上がりの体が温まっている時に行うと、より効果的です。寝違え後のストレッチは、治療ではなく、あくまでリハビリテーションの一環です。自分の体の声に耳を傾け、「伸ばす」というよりは「緩める」という意識で、焦らず丁寧に行うことが、しなやかで痛みのない首を取り戻すための鍵となります。
痛みが和らいだ後の正しいストレッチ