「最近、少し歩くと、ふくらはぎが締め付けられるように痛くなって、歩けなくなる。でも、しばらく休むと痛みが消えて、また歩けるようになる」。もし、あなたがこのような症状を経験しているなら、それは単なる筋肉痛や年のせいではありません。その症状は、「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」と呼ばれる、足の動脈硬化(閉塞性動脈硬化症)の典型的な初期症状である可能性が非常に高いのです。間欠性跛行は、動脈硬化によって足の血管が狭くなったり、詰まったりすることで、歩行などの運動時に、足の筋肉へ十分な血液(酸素や栄養)が送られなくなるために起こります。歩き始めは、筋肉が必要とする酸素量が少ないため、問題ありません。しかし、歩き続けると、筋肉はより多くの酸素を必要とします。血管が狭くなっていると、この需要に供給が追いつかなくなり、筋肉が酸欠状態に陥って、痛みやだるさ、しびれといった症状が現れるのです。そして、立ち止まって休むと、筋肉の酸素需要が減るため、血流が追いつき、症状が速やかに解消されます。これが、歩行と休息を繰り返す、「間欠性」と呼ばれる所以です。この症状は、特にふくらはぎに現れることが多いですが、太ももやお尻に痛みが出ることもあります。この間欠性跛行を、「年だから」「体力が落ちたから」と自己判断して放置してしまうのは、非常に危険です。閉塞性動脈硬化症は、進行性の病気であり、放置すれば、徐々に歩ける距離が短くなっていきます。さらに症状が進行すると、安静にしている時でも足が痛むようになり、やがては、足の指に潰瘍(かいよう)ができたり、組織が壊死(えし)してしまったりして、最悪の場合、足を切断しなければならない事態に至ることもあります。また、足の動脈硬化が起きているということは、心臓や脳の血管でも、同様に動脈硬化が進行している可能性が極めて高いことを意味します。つまり、間欠性跛行は、心筋梗塞や脳梗塞といった、命に関わる病気の前触れでもあるのです。歩くと足が痛む、という症状は、体からの切実な警告サインです。決して見過ごさず、速やかに循環器内科や血管外科を受診し、適切な検査と治療を受けるようにしてください。