腹痛を主訴に病院を受診した場合、医師は、原因を正確に突き止めるために、いくつかの診察や検査を段階的に行っていきます。どのような検査が行われるのかを事前に知っておくことで、不安を和らげ、スムーズに診察に臨むことができます。まず、全ての基本となるのが「問診」です。医師は、痛みの性質(いつから、どこが、どんなふうに痛むか)、食事の内容、便の状態、腹痛以外の症状(発熱、吐き気、下痢など)、過去の病歴や手術歴、女性の場合は月経周期や妊娠の可能性などを、詳しく尋ねます。この問診から得られる情報は、診断の方向性を決める上で非常に重要です。次に、「身体診察」が行われます。医師が、聴診器でお腹の音(腸の動き)を聞いたり、お腹を軽く叩いて音の変化を確かめたり(打診)、そして、お腹の様々な場所を、優しく、あるいは深く押して、痛みの場所や強さ、しこりの有無などを確認します(触診)。虫垂炎を疑う場合は、特定の場所を押したり、足を動かしたりして、痛みが誘発されるかを調べます。問診と身体診察から、ある程度の病気が推測されると、診断を確定させるために、客観的なデータを得る「検査」へと進みます。まず、多くのケースで行われるのが「血液検査」と「尿検査」です。血液検査では、白血球数やCRP(炎症反応の指標)の数値を調べることで、体内に炎症や感染があるかどうかが分かります。また、肝臓や膵臓の酵素の値を調べることで、これらの臓器に異常がないかを確認できます。尿検査は、尿路感染症や尿路結石、糖尿病などの診断に役立ちます。次に、画像診断として、手軽に行えるのが「腹部超音波(エコー)検査」です。超音波を使って、肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓といった、実質臓器の状態や、腹水の有無などをリアルタイムで観察します。胆石や、虫垂の腫れなども確認できることがあります。より詳細な情報が必要な場合は、「腹部CT検査」が行われます。これは、X線を使って体の断面を撮影する検査で、超音波では見えにくい、腸管の状態や、小さな膿の溜まり、微量な出血なども、詳細に描き出すことができます。緊急性の高い腹痛の診断において、非常に強力な武器となります。これらの検査結果を総合的に判断し、医師は最終的な診断を下し、治療方針を決定するのです。