私は昔から、自他共に認める甘党でした。仕事の合間には甘いカフェオレとチョコレートが欠かせず、頑張った自分へのご褒美は、いつもケーキ屋さんの豪華なショートケーキ。夕食後には、アイスクリームを食べるのが至福の時間でした。若い頃は、いくら食べても太らない体質だったため、特に健康を意識することもなく、その自由な食生活を謳歌していました。しかし、30代後半になり、デスクワーク中心の部署に異動してから、私の体は静かに変化し始めました。運動量は減り、代謝も落ちてきたのか、体重はじわじわと増加。健康診断では、毎年「肥満傾向」「血糖値が高め」と指摘されるようになりました。それでも私は「甘いものはやめられない」と、その現実から目を背け続けていました。決定的な転機が訪れたのは、42歳の時のことです。最近、妙に喉が渇く。水を飲んでも飲んでも潤わず、夜中に何度もトイレに起きる。そして、何よりも体が異常にだるく、常に疲労感がつきまとう。さすがに何かおかしいと感じ、私は重い腰を上げて内科を受診しました。採血と尿検査の結果を待つ間、私の心の中には、漠然とした不安が広がっていました。診察室に呼ばれ、医師から告げられた言葉は、私の人生を根底から揺るがすものでした。「検査の結果ですが、血糖値とヘモグロビンA1cの数値が非常に高いです。間違いなく、2型糖尿病ですね」。糖尿病。その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になりました。甘いものが原因ではないと頭では分かっていながらも、「ああ、やっぱりあの食生活のせいだ」という後悔の念が、津波のように押し寄せてきました。医師は、私のこれまでの生活習慣を丁寧にヒアリングし、糖尿病のメカニズムと、これから始まる治療について説明してくれました。食事療法、運動療法、そして薬物療法。私の自由だった食生活は、その日を境に終わりを告げました。診断直後は、絶望感でいっぱいでしたが、栄養指導を受け、自分の体と向き合ううちに、私はようやく気づいたのです。問題は、甘いものを愛したことではなく、自分の体の声に耳を傾けず、無頓着に、そして過剰に摂取し続けた、その「付き合い方」にあったのだと。
甘いもの好きだった私が糖尿病と診断された日