いざ、腹痛で病院へ行こうと決心した時、次に多くの人が直面するのが、「一体、何科を受診すれば良いのか」という問題です。腹痛の原因は非常に多岐にわたるため、最初に適切な診療科を選ぶことが、スムーズな診断と治療への近道となります。まず、腹痛の診療において、中心的な役割を担うのが「消化器内科」です。消化器内科は、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸といった消化管と、肝臓、胆嚢、膵臓といった消化器系の臓器全般の病気を専門とします。胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎、感染性胃腸炎、虫垂炎、大腸憩室炎、胆石症、膵炎など、腹痛を引き起こす多くの病気が、この診療科の対象となります。腹痛の原因がはっきりしない場合や、食後の痛み、下痢や便秘を伴う場合は、まず消化器内科を受診するのが最も一般的で確実な選択と言えるでしょう。次に、一般的な内科、つまり「総合内科」や、普段から通院している「かかりつけ医」も、最初の相談窓口として非常に重要です。特に、腹痛以外の症状(発熱、咳など)もある場合や、高血圧、糖尿病などの持病がある場合は、体全体を総合的に診てくれる内科医が適しています。そこで専門的な検査が必要と判断されれば、適切な専門科へ紹介してもらうことができます。また、女性の場合、下腹部の痛みが「婦人科系」の病気に起因することも少なくありません。月経周期と関連した痛み(月経痛、排卵痛)や、不正性器出血を伴う場合は、「婦人科」を受診する必要があります。子宮内膜症や卵巣嚢腫、あるいは異所性妊娠(子宮外妊娠)といった、緊急性の高い病気の可能性も考えられます。さらに、排尿時の痛みや頻尿、血尿などを伴う腹痛の場合は、膀胱炎や尿路結石といった「泌尿器科」の病気が疑われます。このように、腹痛の原因は様々です。どの科に行けば良いか迷った時は、腹痛以外の「随伴症状」に注目することが、正しい選択への大きなヒントとなります。消化器症状が主なら消化器内科、女性特有の症状なら婦人科、排尿の異常なら泌尿器科。この基本を覚えておきましょう。