子供たちの間で感染症が流行する季節になると、多くの親御さんが「なんとか免疫力を高めて、病気から子供を守ってあげたい」と考えるのは自然なことです。テレビや雑誌では、「免疫力アップ」を謳う食品やサプリメントの情報が溢れています。では、これらの方法で、手足口病のような特定のウイルス感染症に、本当にかからなくすることができるのでしょうか。この疑問に答えるためには、私たちの体が持つ「免疫」というシステムの、二つの側面を理解する必要があります。私たちの免疫システムは、大きく分けて「自然免疫」と「獲得免疫」という二つのチームで構成されています。まず「自然免疫」とは、生まれつき体に備わっている、基本的な防御システムのことです。病原体の種類を問わず、体内に侵入してきた異物に対して、常に最前線で戦ってくれるパトロール隊のような存在です。この自然免疫の働きは、私たちの全身の健康状態に大きく左右されます。バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレスの少ない生活といった、健やかな生活習慣は、この自然免疫のチームを活性化させ、体の基本的な防御力を高める上で非常に重要です。一方、「獲得免疫」とは、一度侵入してきた特定の病原体を記憶し、その病原体だけを狙い撃ちする、高度に専門化された特殊部隊のようなものです。手足口病の原因となるコクサッキーウイルスA16に感染すると、体はこのA16だけを攻撃するための抗体を作り、その情報を記憶します。これが、手足口病の「免疫がつく」という状態です。この獲得免疫は、ワクチンを接種するか、あるいは実際にその病気に一度かかることによってしか手に入れることはできません。ここで、最初の疑問に戻りましょう。「免疫力を高める」という言葉が、もし日々の生活習慣を整えて「自然免疫」の働きを良くするという意味であれば、それは確かに有効です。体の基本的なコンディションが良ければ、たとえ手足口病ウイルスに感染したとしても、症状が軽く済んだり、回復が早まったりする助けになる可能性は十分に考えられます。しかし、特定の食品を食べたからといって、未知の手足口病ウイルスに対する「獲得免疫」が突然生まれるわけではありません。
免疫力を高めて手足口病に備える?知っておきたい体の仕組み