擦り傷で病院へ行く際、主な選択肢となるのが「皮膚科」と「形成外科」です。どちらも皮膚のトラブルを扱う診療科ですが、その専門性や治療に対するアプローチには、それぞれ特徴があります。自分の傷の状態や、治療に求める希望に応じて、適切な科を選ぶことが、満足のいく結果に繋がります。まず、「皮膚科」は、湿疹、アトピー性皮膚炎、じんましん、ニキビ、水虫といった、内科的な皮膚疾患から、擦り傷、切り傷、火傷などの外傷まで、皮膚に関するあらゆるトラブルを幅広く診断・治療する専門家です。皮膚科での擦り傷治療は、主に「感染のコントロール」と「適切な創傷治癒の促進」に重点が置かれます。傷の状態を診て、細菌感染が疑われる場合には、抗生物質の軟膏や内服薬を処方します。また、正しい洗浄方法や、軟膏の塗り方、ガーゼや被覆材の交換方法などを、具体的に指導してくれます。つまり、傷が化膿せずに、順調に治るように、医学的な管理を行うのが、皮膚科の主な役割です。一般的な擦り傷であれば、皮膚科での治療で十分に対応可能です。一方、「形成外科」は、体の表面に生じた、生まれつきの、あるいは怪我や手術によって生じた変形や欠損を、機能面だけでなく、「見た目(整容面)」においても、できるだけ正常に近い、美しい状態に修復することを専門とする、外科の一分野です。そのため、擦り傷の治療においては、「いかに傷跡を綺麗に治すか」という点に、より強い重点が置かれます。例えば、顔や手足など、人目につきやすい部分にできた擦り傷や、将来的に傷跡が目立ちやすそうな深い傷の場合、形成外科の専門的な知識と技術が活かされます。砂やアスファルトの粒子が入り込んだ「外傷性刺青」に対して、特殊なブラシで丹念に異物を除去する処置や、傷が治った後の、ケロイドや肥厚性瘢痕といった、目立つ傷跡に対する、テーピング指導、ステロイド注射、レーザー治療、あるいは修正手術まで、長期的な視点でのフォローアップが期待できます。結論として、感染が心配な一般的な擦り傷は「皮膚科」へ。傷跡をできるだけ綺麗に治したい、特に顔などの目立つ場所の傷であれば「形成外科」へ、と考えると良いでしょう。
擦り傷治療における皮膚科と形成外科の違い