突然の腹痛と共に、激しい下痢や嘔吐に襲われる。冬場を中心に流行するノロウイルスやロタウイルス、あるいは夏場に多い細菌性の食中毒など、「感染性胃腸炎」は、多くの人が経験する、非常につらい病気です。この病気にかかった時、最も重要なのは、適切な対症療法を行い、脱水症状を防ぐことです。感染性胃腸炎の症状は、原因となるウイルスや細菌が、胃腸の粘膜に感染し、炎症を起こすことで生じます。下痢や嘔吐は、体内に侵入した病原体を、外に排出しようとする、体の正常な防御反応です。そのため、市販の下痢止めを自己判断で服用するのは、原則として避けるべきです。病原体の排出を妨げ、かえって回復を遅らせてしまう可能性があるからです。この時期に、何よりも優先すべきなのが「水分補給」です。下痢や嘔吐によって、体は大量の水分と、ナトリウムやカリウムといった電解質(ミネラル)を失います。これを補給しないと、脱水症状に陥り、重症化すると意識障害などを引き起こす危険性もあります。水分補給には、水やお茶だけでは不十分です。失われた電解質を効率よく補給できる、「経口補水液」が最も適しています。薬局などで市販されており、これを少量ずつ、こまめに摂取することが重要です。一度にたくさん飲むと、嘔吐を誘発してしまうことがあるため、スプーン一杯や、ペットボトルのキャップ一杯を、5分おきに飲む、といったペースで、根気よく続けましょう。食事については、無理に食べる必要はありません。症状が強い間は、食事を休み、胃腸を休ませることに専念します。食欲が少し出てきたら、おかゆや、よく煮込んだうどん、すりおろしたりんご、豆腐など、消化が良く、胃腸に負担をかけないものから、少しずつ再開していきます。乳製品や、脂肪分の多いもの、食物繊維の多いものは、症状が落ち着くまで避けましょう。ほとんどのウイルス性胃腸炎は、数日で自然に回復しますが、嘔吐が激しくて全く水分が摂れない場合、高熱が続く場合、血便が出る場合、そして、ぐったりして意識がはっきりしない場合は、点滴による水分補給などが必要となるため、速やかに医療機関を受診してください。
下痢や嘔吐を伴う腹痛、感染性胃腸炎の対処