足の動脈硬化(閉塞性動脈硬化症)は、足の血流が悪化し、痛みやしびれを引き起こすだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める、全身の病気です。その進行を食い止め、症状を改善させるためには、薬物療法や専門的な治療と並行して、日々の「生活習慣」を根本から見直すことが、何よりも重要になります。動脈硬化の最大の原因は、長年の不適切な生活習慣の積み重ねです。予防と改善の鍵は、「食事」「運動」「禁煙」の三本柱にあります。まず、「食事療法」です。動脈硬化の直接的な原因となる、高血圧、脂質異常症、糖尿病を改善するための食事が基本となります。具体的には、塩分の摂取を控え(1日6g未満が目標)、血圧をコントロールします。肉の脂身やバター、生クリームといった飽和脂肪酸や、コレステロールの多い食品(卵黄、レバーなど)を減らし、悪玉(LDL)コレステロールを下げます。一方で、青魚に多く含まれるEPAやDHAといった不飽和脂肪酸は、血液をサラサラにし、動脈硬化を防ぐ効果があるため、積極的に摂りましょう。また、野菜や果物、海藻類に豊富な食物繊維は、コレステロールの吸収を抑え、血糖値の急上昇を防ぎます。カロリーの摂りすぎに注意し、肥満を防ぐことも大切です。次に、「運動療法」です。特に、足の動脈硬化に対しては、ウォーキングを中心とした「歩行運動」が非常に効果的です。歩くことで、足の筋肉への血流が増加し、詰まっている血管の迂回路となる、新しい血管(側副血行路)の発達が促されます。「痛みが出たら休み、痛みが引いたらまた歩く」というインターバル速歩を、1日30分〜1時間、週に3〜5日程度行うのが目標です。この運動療法は、血行改善だけでなく、血圧や血糖値のコントロール、そして減量にも繋がります。ただし、運動を始める前には、必ず主治医に相談し、心臓に負担がかからない範囲で行うことが重要です。そして、最も重要なのが「禁煙」です。タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は、血管を収縮させて血流を悪化させ、血管の壁を傷つけて、動脈硬化を強力に促進させます。どんなに良い食事や運動をしても、喫煙を続けていては、その効果は帳消しになってしまいます。禁煙は、動脈硬化の進行を食い止めるための、絶対条件と言えるでしょう。
足の動脈硬化を予防・改善する。生活習慣の見直し