去年の夏のことですが三歳になる私の息子が手足口病にかかりました。手のひらに赤い発疹が出て口の中の痛みで泣き叫ぶ姿を見て私は一度経験すればもう大丈夫だと思っていました。ところが驚いたことに一ヶ月後の九月に入ってからまたしても同じような症状が現れたのです。二度目の受診で医師から告げられたのは手足口病はウイルスが何種類もあるから何度もかかるんですよという衝撃的な事実でした。私の頭の中では免疫というものは一度つけば二度と寄せ付けない鉄壁の盾のようなイメージでしたが手足口病に関してはそう単純ではないことを身を以て学びました。一度目の原因がコクサッキーウイルスA16型だったとしたら二度目はエンテロウイルス71型だったというように敵の正体が少しずつ変わっているため私の息子の免疫システムはそれぞれの敵に対して一から訓練をやり直さなければならなかったのです。この一夏の間に二回もボロボロになるまで戦った息子の小さな体を見て私は免疫とは単なる拒絶ではなく経験の積み重ねなのだと痛感しました。二度目の時は一度目よりも熱の出方が緩やかで発疹も少し控えめだったのはもしかしたら体の一部で過去の戦いの記憶、いわゆる部分的な免疫の記憶が役立っていたのかもしれません。しかし親としての私の心労は二倍でありプールの予定や旅行の計画がすべて白紙になった絶望感は今でも忘れられません。この経験以来私は手足口病を一度限りのイベントとして捉えるのをやめました。手洗いを徹底し免疫が最も働きやすいように睡眠と栄養を最優先にする生活を心がけています。ウイルスが体内に入ってくることを完全に防ぐのは難しいですが入ってきたウイルスに対して即座に応戦できる強靭な基礎免疫を育むこと。それこそが繰り返す感染症に対する唯一の現実的な対処法なのだと確信しています。今まさに手足口病の看病で疲れ果てているお母さんたちに伝えたいのはその戦いは決して無駄ではなくお子さんの体の中に新しい防衛軍が結成されている最中だということです。完治した瞬間に見せてくれるあの屈託のない笑顔は免疫という見えない宝物を手に入れた証なのです。