それは幼稚園で冬の感染症が流行り始めていたある火曜日の夕方のことでした。五歳になる息子が幼稚園から帰宅すると「喉が痛い」とポツリと漏らし、測ってみると体温はすでに三十八度五分を超えていました。最初はよくある風邪だと思い、家でゆっくり休ませていましたが、夜中になると息子が「体が痒い」と泣き出し、電気をつけてパジャマをめくってみて私は息を呑みました。胸からお腹、そして太ももの付け根にかけて、見たこともないような細かな赤いブツブツがびっしりと広がっていたのです。その赤みはまるで熱湯を浴びたような鮮やかさで、触ってみると皮膚がゴワゴワとしていて、まるで細かい砂が混じっているような異様な手触りでした。翌朝一番で近所の小児科へ駆け込むと、先生は息子の喉を一目見るなり「これは典型的な溶連菌ですね」とおっしゃいました。ライトで照らされた息子の喉の奥には不気味な白い膿が付着しており、舌もブツブツと赤く盛り上がって、まるで熟しすぎた苺のようになっていました。その場で行われた溶連菌の迅速検査はすぐに陽性反応を示し、これが噂に聞いていた溶連菌発疹なのだと確信しました。医師からは、この溶連菌発疹は菌が出す毒素に対する一種のアレルギー反応のようなもので、抗生剤を飲めば数日で消えるから心配いらないと説明を受け、少しだけ心が軽くなりました。しかし、一番辛かったのは処方された薬を飲ませ続けることでした。飲み始めて二日もすると熱はスッと下がり、あんなに酷かった発疹もみるみるうちに薄くなっていきましたが、先生からは「症状が消えてからが本当の勝負です。十日間、一回も欠かさず薬を飲み切らないと、将来腎臓を悪くする可能性があります」と強く念を押されていたのです。元気になった息子は「もう治ったからお薬いらない」と嫌がりましたが、私は合併症の怖さを思い出し、毎日必死になって飲ませ続けました。発症から一週間ほど経った頃、今度は息子の指先の皮が薄くペロンと剥けてきたのを見て、また別の病気かと焦りましたが、これも溶連菌発疹の後に必ず起こる「脱皮」のようなものだと知り、ようやく本当の快復を感じることができました。あの時の、全身が真っ赤に染まった息子の姿とザラザラした手触りは、今思い出しても背筋が凍るような光景でしたが、同時に、皮膚という目に見える場所で体が必死にSOSを出していたのだとも感じます。溶連菌は単なる喉の風邪ではなく、全身を駆け巡る病気であることを身を以て学びました。これから同じように、お子さんの体に突然現れた真っ赤な溶連菌発疹に戸惑うお母さんたちがいたら、どうかパニックにならずに専門医を頼ってほしいと思います。適切な薬と、最後まで飲み切る忍耐力さえあれば、あの苺のような舌も、ザラザラした肌も、必ず元の健康な状態に戻るのですから。