大病院を受診した際に、レジの合計金額を見て目を見開く原因の筆頭が「選定療養費」です。この制度を正しく理解し、回避する方法を知っておくことは、現代を生きる賢い生活者の必須知識と言えます。選定療養費とは、一言で言えば「大病院を便利に使うためのプレミアム料金」です。国は、地域医療の崩壊を防ぐため、高度な医療機関(特定機能病院や一般病床二〇〇床以上の地域医療支援病院など)に軽症の患者が集中するのを防ぎたいと考えています。その結果、紹介状を持たずにこれらの病院を受診した場合、一回目の診察時には必ずと言っていいほどこの追加料金が発生します。しかも、この料金は健康保険の適用外、つまり全額自己負担です。二〇二二年からはさらに制度が強化され、再診時にも「紹介状なしで通い続ける場合」には、三千円以上の追加負担が課されるようになりました。では、このコストをどう回避すべきでしょうか。最も確実な方法は、どんなに小さな体調不良でも、まずは「地域のクリニック(診療所)」を受診することです。そこで医師の診察を受け、もし高度な医療が必要だと判断されれば、医師が「診療情報提供書」、いわゆる紹介状を書いてくれます。この紹介状の発行手数料は約七百五十円(三割負担の場合)ですが、これ一枚あるだけで大病院の選定療養費七千円が免除されるのです。差し引き六千円以上の節約になります。また、紹介状があることで大病院側も「どの検査が必要か」を事前に把握できるため、初診時の無駄な待ち時間が短縮されるというメリットもあります。さらに、大病院での治療が一段落した後の動きも重要です。状態が安定した際、大病院の医師から「近所のクリニックへ戻りましょう」と提案されたら、素直に従いましょう。これを拒んで大病院に固執すると、前述の再診時選定療養費が発生し、毎回の受診料が倍増することになります。これを「逆紹介」と呼びますが、地域のクリニックと大病院は、ITネットワークなどで情報を共有していることも多く、戻った後も安心してケアを受けられます。一部の例外として、救急車で運ばれた緊急時や、特定の公費負担医療制度(小児慢性的疾患など)の対象者、特定健診の結果を受けて受診する場合などは、選定療養費が免除されることもあります。しかし、自分の意志で「有名だから」「家から近いから」という理由で大病院へ行く場合は、財布へのダメージを覚悟しなければなりません。医療は公平であるべきですが、リソースには限りがあります。選定療養費を避ける行動は、あなた個人の家計を守るだけでなく、日本の医療体制を救う、社会的な正義の形でもあるのです。
選定療養費という追加負担を避ける法